「明日、会社で敦子さんに頼もうか」
「え?」
「証人欄」
「あ、はい」
反射的に返事をしてしまった。
いいのだろうか、本当に。
ぐるぐると結論が出ないまま、その日は日用品の買い出しに追われた。
布団は智光さんが通販で購入しておいてくれたらしく、部屋の片隅に置かれている。
すぐに引っ越す予定でいるため家具は買わなかったと聞いて、ほっとした。智光さんに任せるとあれもこれも手配してしまいそうだもの。現に、日用品の買い出しに出かけたときに私が「可愛い」などと言おうものなら即買いしそうな勢いだった。
「やえがほしいものはすべて買えばいい」と甘やかされてどうしたらいいかわからない。それにそんな風に甘やかされることが初めてで、嬉しいような申し訳ないような複雑な気持ちに悩む。
「夜はどこかで食べて帰ろうか。何か食べたいものはある?」
「いえ、特には。というか、あまり外食をしたことがないのでよくわからなくて」
「そうか、じゃあ行ってみたい店があったりもしないのか?」
「そうですね……」
ううん、と考えてみる。
両親がいたころはたまに家族で外食もしていた。でもその後はまったくない。高校生のときだって本当は学校帰りに友達と――。