「はい。何でしょうか」

「お前ってのんきだよな」

「え?」

よくわからず首を傾げる。
お兄さんはふんと鼻で笑った。

とんでもなくバカにしたようなそんなねっとりとした笑みに本能的に背筋がゾクリとする。つーっと背中に冷たい汗が流れた。

「お前さぁ、あいつらに搾取されて悔しくねぇの?」

「……叔父さんと叔母さんは私を育ててくれたので。恩返しと言いますか」

「あいつら、お前のことATMとしか見てないぜ」

「そ、そんなこと……」

ない、と否定したかったけれど、私の口は言い淀む。

本当は薄々気づいていた。だけどそれを認めてしまったら惨めなことこの上なく、自分が自分でいられなくなるような気がした。だから考えないようにしていたのだ。

バクンバクンと心臓が嫌な音を立てる。
体が強張って、指の先がすっと冷えていくのがわかった。震えそうになる指先をぎゅっと握りしめる。

「この旅行の金、どこから出てると思う? お前のへそくりだぞ」

「う、そ……」

声が震えた。

私が貯金をしていることはこの家族には秘密だ。通帳も別にしているし、隠してある。けれどお兄さんは「へそくり」と言った。ということは、私の貯金が気づかれているのは間違いない。
どうして……。