お昼のチャイムと同時に急いでお弁当を取りに行った。
二人分しっかり胸に抱えたところで、敦子さんとバッタリ出会った。
「あら、やえちゃん。特命の作業終わったの?」
「特命の作業?」
「ん? 違った? 社長がそう言ってたと思ったんだけど?」
「あ、ああ~、そうですね」
私は慌てて頷く。
私が泣いて事務所に戻れないことを、きっと社長が上手くごまかして伝えてくれたんだと理解する。
「午後からは戻りますので」
「そう? 社長ったら一日中やえちゃんを独占するのかと思ったわ」
「独占って」
「お昼は社長と?」
「あ、はい。せっかくなので一緒に食べようって」
「へぇ~、社長もすみに置けないわね」
「どういうことです?」
「何でもない、何でもない。ほら、早く持って行かないとご飯が冷めちゃうわよ」
敦子さんは楽しそうに私の背を押す。
社長がすみに置けないってなんのことだろう……と思いつつ、また後で敦子さんに尋ねてみようと考えながら社長室へ戻った。