ボタンをひとつ、外す。
と――。

くっと手が掴まれる。

「……今朝はここまで。仕事に行けなくなる」

「あっ」

時刻を確認すれば、起きる時間からずいぶんと時が進んでいる。
これでは朝食の準備も間に合うかどうか……。

「今日はコンビニだな」

「ごめんなさい」

「謝られると悪いことをしているみたいだ。嫌だったか?」

私は慌てて首を横に振る。
嫌だなんて、とんでもない。嬉しくて嬉しくてたまらなかった。智光さんに触れられるたび、まるで愛されているかのように錯覚して――。

急にじわっと視界が揺らいだ。

「どうした?」

智光さんの心配そうな顔がどんどんぼやけていく。

「やっぱり嫌だったか? ごめん、やえ。本当にごめん」

「ち、ちがっ……そうじゃ……なくて……」

込み上げる涙で上手く伝えられない。
どうして涙が出てしまうのだろう。

私は本当に嬉しかった。智光さんが私に優しくしてくれて、たくさんのキスをくれて、このままエッチしてもいいって思った。私は智光さんを求めていたし、なにもかも智光さんに捧げたいと思ったのに。

でも智光さんはどうだったんだろう?
私が求めちゃったからしてくれたんだろうか。
本当は嫌だったりしない?

どうか私のことを好きになってほしい。
智光さんに愛されたいよ――。