仮にこのインコがガーデンの魔物を装ったものだとすれば、取引ルートがおぼおげに見えてきた。
 普段関所で確認されるのは大きな積み荷のみで、個人の手荷物は検査の対象ではない。
 同一人物が往来を繰り返すと怪しまれるため、こうやって旅人風の者を見つけては迷子あるいは贈り物を届けてほしいと言って謝礼を渡し、運び屋にさせていたのではないだろうか。
 頼まれた方は善意でやっているわけで、犯罪に加担している意識はまったくないはずだ。そもそも普通の動物を運ぶことは犯罪ではない。

 これが最後にふさわしい取引?
 もしかして、ただのインコを「実はフェニックスです!」とでも騙ってラシンダ王国の貴族たちに売りつけているとか!?

 インコはひとまず警備隊が保護することになった。若者もどんな人相の男から頼まれたのか詳しく聞くために警備隊員に連れられていく。
 これで解決になるんだろうか。それともインコはダミーで別のペットがどこかに紛れているのか……。

 リリアナはあれこれ思案している途中でブルーノ会長の姿が見当たらないことに気付いた。
 朝からリリアナたちと一緒に積み荷の確認作業に立ち会っていたはずだが、どこにもいない。
「会長はどこ?」
 キョロキョロしながらハリスに尋ねる。
「商談の約束があるとか言って、こっそり抜けてどこかへ行った」

「なるほど。じゃあその商談とやらに、そろそろわたしたちも行っちゃう?」
「そうだな、そろそろいい頃合いかもな」
 リリアナとハリスが揃ってニヤリと笑った。