そこには小さなカゴに入れられた黄色いインコと、オロオロしている旅装束の若い男性がいた。
 インコの首には、ひもを通した小さな赤い玉が括りつけられている。

 いつもコハクと過ごしているリリアナやハリスは、それが魔道具の首輪ではないことが一目でわかった。
 ただのガラス玉だ。
 これがガーデンのペット用の首輪を装ったものなのか、ただの装飾品なのかは定かではないが、魔道具の首輪ではない以上、このインコは魔物ではなくただのインコということになる。

「迷子のインコを、ラシンダの飼い主の元に届けるように頼まれただけです」
 若者は大陸のあちこちを巡っている途中の旅人で、宿からこの関所へ向かう途中に見知らぬ初老の男性から声をかけられたという。
 ラシンダから飛んできたインコを保護している。首輪のようなものをつけているから野生ではなく飼い主がいるはずだ。もしもラシンダに行くならこのインコを届けてくれないかと頼まれ、いくばくかの謝礼もすでに受け取ったらしい。
「関所の向こうにある愛玩動物を扱っている商会に持って行けばいいからって、カゴごと渡されただけです」
 若者が嘘を言っているようには見えない。