ブルーノ会長がペット取引に関わっているのは間違いない。
「いざとなったらコハクに協力してもらって商会を捜索して、証拠探しすればいいわ!」
 徹底調査を目論んで鼻息を荒くするリリアナに向かって、ハリスが苦笑しながら首を横に振る。
「俺たちの請け負った依頼は、実際にペット取引が行われているか否かの調査だ。そこから先は、この国の警備隊とガーデン管理ギルドのお偉いさんたちの仕事だから、ペットの流通経路と仲介者がわかればそれでおしまいだ」

「えー」
 リリアナは不満げに頬を膨らませる。
 たしかに依頼には、黒幕をこらしめてくれとか捕まえてくれではなく『調査』としか書かれていなかった。
「じゃあ『あなたが黒幕ねっ!』って、ビシッ!と指さしできないってこと?」
「そんな探偵ごっこがしたかったのか?」
 ハリスが呆れられてしまったが、その通りだ。
 
「ただ、なにか裏がありそうだとは思っている」
「そうよね」
 なにか不自然なものを感じているのはリリアナも同じだ。踊らされているような気がする。
 明日になればそれが全て解明されるのだろうか。
 
 モヤモヤしたものを抱えたまま、取引当日を迎えた。
 リリアナとハリスは朝からラシンダ王国との国境線にある関所で、ここを通る全ての積み荷と手荷物のチェックに立ち会っている。
 現在は良好な関係を保っている両国は、荷物だけでなく人の往来も多い。
 普段では行わない手荷物検査や、釘打ちされている木箱の中身もふたを開けて確認するため時間がかかり、あちこちから文句が聞こえるが、それは仕方ない。
 
 検問で大騒ぎして注目を集めているこの状況で本当に取引を成立させる気なんだろうか。
「これ、やってる意味あるのかしら……ていうか、お腹空いたんだけど!」
 ついにリリアナまで文句を言い始めた時だった。

「すみませーん! 冒険者の方、ちょっと確認をお願いしまーす!」
 警備隊員が呼ぶ声が聞こえる。
「赤い飾りをつけた生き物が見つかりました!」

 ハリスとリリアナは顔を見合わせて声のする方へと駆け出した。