「魔牛は干し肉しか食べたことがない。生肉を焼いたらあんなにも美味いんだな」
「しかも回復効果が干し肉よりも遥かに高いのよ」
 リリアナに得意げに言われて納得した。
 ステーキを食べれば食べるほど元気になっていったのは単に空腹が満たされたからというだけでなく、実際に体力も怪我も回復していたということだろう。

 疲労回復効果を謳っている巷の商店の魔牛の干し肉は、実際は気休め程度の効果しかない。
 それでも持ち運びに便利な上にそのまま食べられるため、最近ではもっぱら干し肉がテオの主食のようになっている。

「『トラブルメーカーのテオ』ってあなたのことだったのね。冒険者カードで名前を確認させてもらったの」
 冒険者カードには名前と生年月日が印字されているほか、冒険者がガーデンで倒した魔物の記録も保存される金属製のプレートで、ガーデンに入る際には携帯が義務付けられている。
 
「とんでもない野生児でトラブルメーカーだっていう噂を聞いていたからきっと強いんだろうなって思っていたのに、あなたこんなちっちゃい子にズタボロにされるだなんて、意外と弱いのね」
 リリアナがレオリージャの子供を抱きかかえてテオに見せる。
 間近でふわふわの白い毛を見た時に気付いた。
 倒れる寸前、テオの顔めがけて飛んできた物体はコイツだったのかと。

「ちげーし! 俺は弱くなんかない!」
 テオはムスッとしながら叫んだ。