分厚いステーキにクリームシチュー、骨付き肉のグリル、パスタ、サラダ、スープにデザートまで、テーブルいっぱいに料理が並べられていた。
 しかも、まるでできたてのような湯気を立てているではないか。
 リリアナがゴクリと喉を鳴らす。急にお腹がすいてきた。

「さあ、まずは一緒に祝杯をあげようじゃないか」
 みぞおちを殴られたことなど全く意に介していなさそうな様子のレオナルドだ。
 リリアナはレオナルドにエスコートされるまま椅子に腰かけた。
 
 正面に座ったレオナルドとシャンパンで乾杯する。
「おめでとう。遠慮なくお食べ」
「いただきます!」
 呪いを解いてもらうつもりなのだから、これが最後の大食いになるだろう。
 もちろん遠慮なく全部いただくわっ!
 リリアナは目を輝かせて料理に舌鼓を打った。
 その様子をレオナルドはにこにこ笑いながら眺めている。

「見事だったよ、まさか魔物たちを霧化させるとはね。途中の魔物たちの攻略だってガーデンを知り尽くしていないとできない芸当だ。正直脱帽した。ただ同じ手を使う冒険者が増えるのは不本意だから、これからは霧玉の使用は禁止にしようかな」
 レオナルドがすべて見ていたかのように語る。
 
 リリアナは、ちょうどいいミディアムレアの焼き加減のステーキを咀嚼しながら適当にうんうんと頷く。
 これがレオナルドの手料理なのか魔法で作ったのかは知らないが、じんわりと体が活性化していく感じから察するに食材は魔物だろう。
 どうせ自分に「これから」はない。呪いを解いてもらえば冒険者を引退するつもりだから、霧玉の使用禁止云々はどうでもいい。

「でも、たとえばわたしが目を瞑った状態で前方に魔法を撃ち続ければ、それでも勝てていたと思うけど」
 リリアナの質問に、レオナルドの形のいい唇が深い弧を描く。
「あの昆虫たちはね、絶命する間際に卵を産むんだ。そしてその卵からまた昆虫が出てきて、倒しても倒しても無限湧き状態になるはずだった」

 やめて! せっかくの美味しいステーキが不味くなりそうだわ!