「なぁ女、何してんの?」
騒音の中だった。自分に問いかけていると気付いたのは、壁に落書きされた蜘蛛の絵から視線を逸らしたとき。
上手く描くなあ、と満足に鑑賞し終えた直後だったものだから、驚いて固まってしまった。
声をかけてきた男の人は、数人。全員でわたしを囲むように見下ろしている。
見覚えはないけれど。
後ろめたさはそれなりにあった。
「……何も、してません」
「じゃあ暇なんだ?」
「ええ、と……」
そういうわけでもないような。
戸惑っていたら、突然腕を掴まれる。
「女が一人でいたら危ないだろ?」
よくわからないけれど、わたしはここにいてはいけないらしい。
同い年ほどの男の人がたくさんいたから、隠れ蓑には最適な場所だと安易に入ったのがいけなかった。
よく観察してみれば、女の人はわたし以外にいない。
女人禁制、だったのかも。