今までの我儘さが無くなった私を、侍女達が何かの病気だと疑ってきていたのが少し落ち着いたのは、私が過去に戻ってきて三日目の事。

 今日はこれまでの私が最悪の道を歩むことになった始まりの日、と言ってもいい。

 始まりの日――それは女神にこの国への加護を授かるための大事な祭事である『聖クラチア祭』で、クラウド様とサラが運命の出会いを果たしてしまう日。

 クラウド様が民衆の前で王族のみが持つ聖魔法を女神に捧げる特別な瞬間を目にするため、気合を入れて会場へと向かった私の死の歯車が動き出してしまうのだ。

 繰り返してきた人生で毎回、二人は出会って来たから間違いなく今日も出会う。だからと言って私はその出会いを阻止するなんてことはしない。

「殿下の恋が始まるんだから、それを邪魔する訳にはいかないもの」

 今までの私だったらダニエラ様から頂いたドレスに身を包み、侍女達に無理言って用意させたダイヤのアクセサリーを着けて、お父様に王家の使いの人に馬車を用意させてと無理難題を押し付けて会場に向かっていた。

 でも今日はそんな誰かを困らせるようなことは一切する気がない。