こちらに向かってくるダニエラ様に、殿下はいきなりサラから私を引き剥がすと、唇に優しくも少し強引な何かが触れた。

 へ……?!い、今っ何を……?!

 不敵に笑う殿下の顔はすぐ目の前にあって、吸い込まれそうになる。

「もう絶対に離さない」

「殿、下っ……!」

 再び唇に何か触れる寸前、殿下を想う気持ちが溢れ出て止まらない。

 我慢するなと囁かれては、もう歯止めが効かなくなる。

 今度は私からその感覚に酔いたくなって求めに行くと、受け止めてくれるように温もりが触れた。

 さっきよりも少しだけ長く触れた温もりが離れて行くと、目があった殿下と笑い合う。

「いやぁああ!!違う!違うでしょ!エリーザの絶望の顔が見たいのに!!悪役令嬢がクラウドと結ばれるなんて有り得ない!!」

 叫びながら苦しみもがくダニエラ様は膝から崩れ落ちていく。

 そして目を疑うことに、私から零れるように出る輝く光がダニエラ様を包む影を浄化していたのだ。

「真実の愛に辿り着いたこの世界に、貴様の居場所はない。これで終わり≪ハッピーエンド≫だ」

 殿下の言い放った言葉と共に、私の光も大きくなって影を全て飲み込んだ。