私の胸の中でなくサラの温もりが心の中に宿った何かを溶かしていく。

「なっ……エリーザ?!その子は私に毒を盛った犯罪者なのよ?!いたぶってやりなさい!!」

 国王陛下の隣に座っていたダニエラ様が立ち上がり鎖のペンダントをかざすのと同時に何処からともなく現れた殿下が、庇うように私の前に立った。

 ふとこちらを振り返って見せた殿下の笑顔に、体を支配していた靄が瞬く間に消え去り胸元で何かが弾けた。

 ざわつく会場を無視して、殿下は凛とした声でハッキリと言い放つ。

「母上……いや漆黒の魔女、その正体を隠しても無駄だ。母上の体を乗っ取り、愛するエリーザの意識まで奪い、この国を……世界を滅亡と導く貴様の計画はここで終わりを迎えるのだからな!」

「な、何を言っているのクラウド!」

「誰が貴様に毒を盛ったと?確かにサラは貴様に乗っ取られた母上の容態を回復させる薬は開発した。だが毒を盛ったという作り話は、俺が嘘を伝えたエリーザの意識を読み取れる貴様にしか、分からないことだ」

「!!」

「生憎、繰り返してきた記憶があるのは貴様だけではないのでな」

「あんたっ……!不幸の鎖《オートモード》が切れて!?」

 ダニエラ様の口調が明らかに崩れて、気品ある王族としての動きではなくなった。