覚えてる……サラの新薬を発表する講演会で同じような動きを取ったことを。

 綺麗で爽やかな殿下と同じ瞳の色と同じ色のドレスを着ていたサラに飲み物を掛けて、惨めだと嘲笑った。

『憎き相手は惨めでしかないのよ』

 どこが惨めなの?私がやっている事の方が何倍にも惨めで醜いのに。

『殿下の心に寄り添うために王妃殿下を危険に晒した女を庇うの?』

 サラが本当にしたっていうの?聖女の力を持つ彼女がダニエラ様に毒を盛るなんてそんあ馬鹿げたことをするはずがない。

 人々を癒し救うサラは誰よりも凄い。

 可愛くて、こんな私にも手を差し伸べてくれるくらい優しい。

『偽物の顔を向けられているとも知らずにいるのはあんたよ』
 
 そうだとしても、きちんと話し合えば分かるはず。だって、初めて出来た友達なんだから。

 殿下に何か言われてもいい。嫌われたっていい。

 こんなの間違っているって、婚約者として最後に教えなきゃ……私が私であるうちに。