こちらに気付いたサラは、一瞬身構えたように見えたがいつものように朗らかに笑った。
「こんな所にいるべき人間ではないと、まだ分からないの?本当にみすぼらしいと自覚なさい?」
「エリーザさん……」
悲しそうな表情を浮かべるサラに心が痛むのに、スラスラとその言葉は出てくる。
何だなんだと周囲の目がこちらに集まって、調子に乗った口は言葉を吐き続けた。
「殿下に気に入られようと必死な姿は見物でしたわ。私と言う婚約者がいると言う事を知っていても尚、そういう行動ができるなんてどういう神経をしているのかしら。それともそんな下衆な性格が平民には当たり前なことなのかしら?」
違う、サラはそんなこと一切していない。
可愛くおねだりしてこんな私と一緒に居てくれる大切な友達だ。彼女をもう傷つけないで。
「それで?そんな下衆な貴方が、一体どうしてダニエラ様の事を苦しめる選択を取ったのかこの場で教えていただきましょうか」
「何のことですか?!」
「あら?白を切るおつもり?私の口から話しても良いのだけれど」
何も証拠を持っていない私がサラを犯人にできるわけがない。
もういい加減止まって。怯えたサラを見たくない……これ以上、サラに嫌われたくない。
「私は何もしていません!」
「へえ。そう、なら一度頭を冷やして差し上げますわ。きっと自分の罪に気がつくでしょう」
給仕が配る飲み物が目に入った私は、そのグラスを手に取った。