有り得ない。こんなこと、今まで一度も無かった。サラがダニエラ様を?なんで?
疑問ばかりが浮かんでくるけれど、答えを示してくれる人は誰も居ない。
冷たい風が吹き抜けて来て、私はとりあえず疑問と共に家へと帰ることにした。
次の日からの記憶もまた曖昧に戻り、考える時間が足りなかった。
もう……誰も幸せになれる道に進めないのだろうか。
考えただけ瞬く間に時間は溶けて行き、遂にやってきてしまった舞踏会当日。
その日はいつもよりも頭にかかる靄が酷くて、それだというのに体は勝手に動く。
煌びやかな王宮の大広間には、着飾った貴族達で溢れ返っている。
負けじと着飾った私はダニエラ様から頂いたドレスとブローチを付けて、気品を漂わせながら会場を我が物顔のように歩いていく。
取り巻き達に囲まれながら、低い身分の令嬢を見て鼻で笑う私はいつもの私じゃない。
「あら、そこに居るのは平民じゃない」
私がプレゼントした淡いピンク色のドレスを着て、緊張感を漂わせるサラに向かって私はそう言い放った。
自分の意思とは違う何かが私を操って止まることを知らない。