私が二人の時間を作ろうと動いてもないのに、二人が自ら共に時間を過ごしているのを見て頭を殴られたような衝撃が走った。

「……っ」

 そうなることを望んでいたというのに、どうして今になって胸がこんなにも苦しいのか分からない。

 何を話しているの?

 間を割って問い詰めることも出来ず、私は見ているのが辛くなって後ずさる。

 誰も居ないはずの回廊から僅かな私の足音が響いて、殿下が何かに気付いたように周囲を見渡した。

 見つかる訳にはいかないと、慌てて私は近くの部屋に飛び込んだ。

 滲む視界に気がついて、そのまま涙を流すと心配と驚きを含んだ声が掛かる。

「大丈夫ですか?」

 こちらを覗き込む瞳は、殿下と同じ蒼い瞳。

 だけど、殿下とは違う蒼さに私は安堵の息を零した。

「フォルス……」

「エリーザ姉様?!」

 私を姉様と呼んでくれるのは、たった一人しかいない。殿下の弟で、この国の第二王子のフォルス。