「そう言えば……ずっと前からと言いましたが、このペンって新商品でしょう?」
 
 貰ったペンには、ここ最近発売されたものを表すロゴが刻まれているのを見つけていた私は疑問を口にすると、サラは僅かに視線を逸らしたような気がした。

「え!?あ、はい!実は父の伝手で新作がどんな物か知っていて!!」

「そうなんですの?」

「ま、またいつか今度、新作が知れたらエリーザさんにお伝えしますね!それより!!クラウド様に王宮のお茶会に誘われて――」

 気になってしょうがない相手の名前が出てきて、思わずピクリと体が跳ねる。

 殿下に隙を取られてしまったあの日からずっと殿下を意識しないように必死な毎日を送っている。

 今でも鮮明に思い出せる唇の感覚に、気がついたら殿下を目で追ってしまうことも暫し、いや頻繁にあるけれど……。

 大胆に迫ってくることはないというのに、なぜか視界に入るだけで今まで以上に意識してしまうのだ。

「エリーザさんも一緒に参加してほしいと伝言を預かりました」

「わ、私も?!」

「もちろん!だって婚約者なんですから、当然ですよ」

 当然と言われても、私はその婚約を破棄する為に奮闘しているという事はまるで分かっていない。

 殿下が可哀想とでもサラが言い出してくれれば、どれだけ楽か。