二人きりには出来なかったけれど、サラにいつの間にか懐かれているのは良かった事。

 ここはひとつ、サラの前で殿下との仲が悪い事を示して、同情を買ってもらう作戦決行よ!

「殿下とは婚約者であっても、親同士が決めた政略的なものでしかございません。そこから特別な感情が生まれるなんて事はありませんから」
 
 こう言われれば、殿下の心だって離れていくし、サラは殿下が可哀想と支えてあげようと思うでしょう?

 我ながら、いい悪役令嬢っぷり。

 重たくなった空気に心の中で拳を握り締め、冷たい言葉を時折吐き出してはサラの登校初日は終わった。

 そこからというもの、私は何かと殿下とサラの時間を作るように動いた。

 殿下に呼ばれた休日もサラを呼んで二人きりにした所で途中で突然帰ってみたり、わざと教室内でも二人が隣に座るように空いている席を占領してみたりと、やること全てが二人の時間を作り上げることに成功した。

 加えて殿下を避けるようにしていけば、自ずとサラに気持ちが動いていく。

 苦しいけれど、誰かを不幸にすることなんて絶対にもう嫌だから。

 殿下の幸せは私の幸せになる……だから何も怖くはない。

「エリーザ」

「失礼。先生に呼ばれていますので」

 必要な嘘ならいくらでも付いた。悪役令嬢に嘘は必要不可欠だから。