よく眠れずに迎えた翌日。
記憶の整理をして気持ちを落ち着かせようとしていたけれど、侍女達に慌ただしく支度を整えさせ屋敷の外へと放り出されると馬車に乗ってある場所へと向かっていた。
近づいてくる見慣れた建物に、そうかと小さく呟いて辺りを見渡した。懐かしいと思う反面、十二回も見てきたと思うと何だか複雑な気持ちだ。
始まりの日を迎えたのなら当然、その後もやって来る。
「サラを虐めた過去を変えていくわよ」
馬車が止まり降り立ったその場で、学校を見つめた。記憶の中にある校舎の姿は何一つ変わらない。
周囲から挨拶が投げられ、可憐に対応する私は今までと何ら変わりないはずだ。
学校では皆からちやほやされることに優越感を感じていたけれど、今思えば上辺だけの関係でしかないんだから本当に私ったら哀れな女。
まあ、公爵家に近づきたい下心を持っている人ばかりに囲まれていたんだから、そりゃあちやほやされるわよね。私じゃなくて、家柄を見ていたんだもの。
信頼できる友達も悪事を止めてくれる友達もいなかったお陰で、この後の二年間の生活はいつも息苦しかったし、いじめていたという証言を殿下に売った取り巻きたちのせいで命を落とすんだから。
彼女達とは必要最低限だけで、あまり関わらないようにしなきゃね。