「お嬢様。先日した約束は覚えておいでですね?」

「おうよ」


聖司くんは勇ましい返事をした私に何か言いたいことを飲み込んで、続ける。


「……本日のパーティーを問題なくやっていただければプラチナに上がれるはずでございます。粗相のないようにお願いいたします。以前のように食べ物が甘すぎたからと言って表情に出すようなことは決してなさらないようにしてー…」

聖司くんは、くしで私の髪を優しく梳かしながら鏡越しにくどくどと注意事項を垂れ流す。

それを私はアホみたいな顔で右から左へ受け流す。

「ほいほーい」

「……返事に『ほい』はおやめください」

「り☆」

「……」

聖司くんの目の奥が殺し屋のそれになったので、私は「わかりました」と正しい微笑みを浮かべた。