「……聖司くんは……どんなところに住んでたの……?」

これは、いつもだったら絶対にしない質問。

『そんなこと聞く暇があったら勉強してください』って怒られそうだもん。

だからこそ今、聞く。

「……祖母と母と3人で……田舎で暮らしてました」

しばらくの沈黙を挟んで、聖司くんはポツポツと話し始める。

「小さな集落です。そこに住む人みんな家族みたいに近くて、優しかった。中学生の時に祖母が亡くなって……母と街に移り住んだのをきっかけに家を壊してからはもう行かなくなりましたけど」

「……そうなんだ」


聖司くん、都会っ子じゃなかったんだ。

お父さんは……いないのかな。


それ以上聖司くんは何か言う気配はなく、相変わらずうるさい蛙の鳴き声と、サワサワと風で揺れる木々の音に埋め尽くされている。


私は聖司くんの背中を見つめて考え込む。

これ以上聞くのは立ち入りすぎ…?

でも気になる。

聖司くんのご家族のこと。

……このとき私は、思考の沼に陥ってしまっていて、聖司くんの背中ばかり見てしまって足元が疎かになっていた。

そして、



「ぎゃあ!?」



砂利道で滑ってバランスを崩した。



「!」