準備を終えた私たちは、寮監に見つからないようにこっそり外に出た。
寮の裏にまわると少し離れたところにタクシーが一台止まっていて、それに乗り込む。
「○×市△町二丁目まで」
聖司くんがつらつらと住所を言った。
「え!?住所覚えてるの!?」
「当たり前じゃないですか」
「え、すご」
「そうです凄いんです」
謙遜という言葉を知らない執事は私の隣で堂々と足を組んだ。
そしてタクシーは、寮を抜け出したお嬢様と執事を乗せて走り出した。
窓の外には見慣れない夜のネオン。
知ってる道のいつもと違う景色、寮則を犯してしまった高揚感。
夜に外出なんて、いつぶりだろう。
……ちょっと楽しいかも。