「ななんななな……!?」

「お嬢様が風邪を引かれては困りますから。身をもって暖めて差し上げますね」


聖司くんのシャンプーの匂いや、ほてった肌の感触に顔が熱くなって、心臓はドコドコけたたましく鳴り始める。


「や、大丈夫!大丈夫!いらない!いりません!!」

「遠慮なさらないでくださいお嬢さ、ま」


〝ま〟を合図に聖司くんは私をお姫様抱っこした。


「ッギャーーー!!」

「うるせぇ」


執事スマイルと口の悪さがカオスな聖司くんは私をソファに優しくおろすと、覆いかぶさるように私の上に乗った。

顔の両横に聖司くんの手がつかれて、逃げ場がなくなる。


「え!?な!?」


熱くなった私の頬に手の甲で触れた聖司くんが、フッと微笑んで甘い声を落とした。


「もっと熱くして差し上げることもできますが……いかがでしょうかお嬢様」

「……!?」


な、何を言ってるの、この人…!?

聖司くんの艶っぽい表情と、今から何かが起こってしまいそうなとんでもない体勢に、さらに熱が上がる。


「ちょ、ちょ、ダメだよ…!」

「何がダメなんですか?」

「だ、だって、私たち未成年だし!そもそも執事とお嬢様は恋愛禁止で……っ」


……と。

そこまで言って気が付いた。

……このニヤニヤした顔。

聖司くんが愉快で仕方ないって時の顔。

からかわれている……!!