部室棟の地下から出てくると日は傾きはじめていた。
散って地面に落ちた桜の花びらが緩やかな風に乗ってふわっと宙に浮いてはまた地面に戻る。
お互い特に話すこともなく、足は自然と喫煙所に向かっていた。
「ねぇ、タバコ、いつから吸ってるの?」
沈黙が続きすぎたけど、やっとユウに話しかけることができた。
「俺?んー確か、一番最初に吸ったの、中学のときかなぁ。」
ポケットの中のタバコを取り出して、火をつける。
あたしなんかより、ずっと慣れた感じで煙を肺にためて吐き出す。
「俺さ、1浪してっからもう19なんだよね。だから、中学からタバコ吸ってるってことは・・・、4、5年は吸ってるよな。今までのタバコ代計算したら何十万になるんだろ。」
「あはは。そう考えるともったいないよね。」
あたしも、自分のタバコに火をつける。
あたしは吸いたいってよりは、ここにいる為の口実のようなもの。
「ああ、ちなみにシノブも1浪してっから俺とタメだよ。」
煙を吐きながら付け足した。
「あっ。そうなんだ。みんなあたしより1コ上なんだね。」
気の利いたこともいえないあたしは、そこで会話をとぎらせてしまった。