現在,球技大会の決勝戦中である。

敗戦した私のチームに参加権はなく,皆はあちこち観戦に沸いていた。

ふらふらと,水呑場にいた私。

その私に声をかけてきた男子は,何故か。

水道前の男子トイレ……の窓から顔を出して,私を見ていた。

何故,そんなところに……?

汚れた窓のサンも気にせず,頬杖をついて眠たそうにして,私をやはり見つめている。

誰,なに,やっぱりなんでそんなところに……?

変な人……

普段の自分を棚に上げて,私は分かりやすく引いた。



「何してるの,おバカで無邪気で能天気,オマケにチョロそうなあゆさん」



固。

ピシリと音を空耳するほど,瞬時に固まった私の身体。

この人,なに,言って……

良く見れば,かっこいい人だ。

目鼻立ちは整い,可愛いとも言える。

ふんわりして掴みにくそうな雰囲気は,逆に人を良く惹き付けそうで。

なのにその口から放たれた言葉は,一切飾らない失礼なもの。

何の事かは,直ぐに分かった。

もーちゃんの見た,もーちゃんの知らない男子は,そこまでズタズタに言っていたの。

そんなに明け透けに,やけに詳細に口にするからには……知り合いの予感がする。

去年のクラスメートとか,そのあたりだろうか。

あたりが絞られても,一切嬉しくないけど。

ガクンと項垂れて,そんなことよりもやはり誰だと目の前の男子が気になる。