しかし、反対に彼の人といた時は素晴らしく満たされていた自分がいたのも事実なのです。与えられる蜜が甘く。許されない恋だと分かっていたのです。今も、そう思っているのです。

私は機会を失いました。

どれだけ愛していてももうあの高潔な人に友として並べる機会さえも失ってしまったのです。しかし、ただ幸せだったのです。


矛盾を抱えているのだと悟りました。彼の人に思いを告げなければきっと今でも友のような顔をしてそばに立てた。

しかしやはり密時は幸せだったのです。

私は生涯この思いを胸に抱えて生きていくのでしょう。今も燻るこの劣情と共に。


桃の花を見る度に、匂いを嗅ぐ度に、果実を食む度に。いつまでも消えない思い出が色濃く刻み込まれる。