本当は、分かっていたのです。

寂しくなんてないわけがなかったのです。

今すぐにでも逢いに来て欲しかったのです。


私の体はいつまで母の腕に抱かれていたのか、いつから支えてくれていた父の手が私を離れたのか分からないのです。

人の体温など知らぬのです。
知りたいと願うのはエゴなのでしょうか

数日後に、家族が亡くなったという報告を受けました。飛行機の壁落事故に巻き込まれたと言うのです。私は一縷の望みを掛けて聞きました。

「どこ行きの便に乗っていたの?」


と。告げられた結果は、無慈悲にも日本ではありませんでした。


訃報を聞いても何も変わることはありませんでした。

ご飯の味がしなくなったり、目の前がモノクロの世界一色になるなんてことはありませんでした。

なぜなら、元々、ご飯に味がするなど感じたことは無いし、世界を色鮮やかだと思ったことなどないのですから。