「最初から悠希くんにあげるのは
こっちだったの。
でも、勇気が出なかった。

きっと妹みたいにしか思ってくれてないし、
私なんかに好かれても嬉しくないって
決めつけて、
ずっと遠回りしていたの。

悠希くんが私を好きだと言ってくれた時は
何かの冗談で揶揄ってるのかなって思った。

それくらい、私は私を信じれないし、
悠希くんのことも疑ってしまったの。」


過去に何度か、
私は男子からの嫌がらせを
受けたことがあり、
男子への信頼感がいまだに薄い。
それが例え、仲がいい人であっても。


「私は、昔にずっと好きだった男の子に
告白をしてもらったことがあって、
すごく嬉しかった。

だけど、それは私がその子を好きだと
周りが知っていて、
嘘の告白をしてきただけだったの。

想いが踏み躙られる気持ちって
こんなに苦しいんだって思った。
だから、
簡単に信じることができなかったの……
ごめんなさい。」

「ううん、そんなことされたら
誰だってそうなるよ。だから謝らないで。」


その優しい言葉に目頭が熱くなる。
私は、泣きそうになりながらも続けて話す。


「嘘の告白、された後にね。
『誰がお前みたいなやつ好きになるかよ!
自意識過剰!』
って言われたの。
私はその言葉に今でも囚われてる。
幼稚な悪戯で本当はそう思ってないかも
なんて頭ではわかってるのにね。
言葉って、怖いね。」

「美那穂ちゃん……。」


悠希くんは私の頭に手を伸ばし、
優しくぽんぽんと撫でると
「話してくれてありがとう。」と
なぜか泣きそうな顔をして言った。


「悠希くんが伝えてくれた想いに
嘘はないって、信じられた。

それは悠希くんが本当の言葉を
ぶつけてくれているって思えたからだよ。

だから、
こうして今あの言葉の呪縛が解けた。
魔法みたいにね。」