「俺ってさ、
昔から本を読んだり人の話を聞いたり、
テレビを見たりするのが好きだったんだ。」

「だから、賢いんだね?」

「そうかな?
でも、学ぶことに関しては嫌いじゃないよ?

知らないものを知るって
案外楽しいものだから。」


悠希くんは、先程までカイロ代わりに
使っていたカフェオレの缶の蓋を開けると
少しだけ口にする。

そして、はぁっと白い息を吐くとまた、
話を続けた。


「だからこそ、だよね。
キミに出会ってから、
知らない感情がたくさん溢れてきた。

キミのことを特別に可愛いと感じたり、
そばにいたいと思ったり、
笑顔が見たいと何かと試行錯誤したり、
自分でも気づかなかった。

こういうこと考えられる自分に驚いたよ。」

「悠希くん……」

「これは、誰にでも思ってる感情じゃない。

家族に対しての感情と似ているけど、
似つかない。
何か違うって色々調べて知ろうと思った。
そうしたら、気づいたんだ。

この感情が
人を「好き」になるってことなんだって。

そばにいて落ち着いて、
なのに鼓動は速いまま、触れたくて、
時間が止まってくれたら良いのにって、
そんなことばかり。」

「……。」

「魔法みたいだね、恋って。
こんなに感情を揺さぶられるものだと
思っても見なかったよ。

まだまだ人間の感情って
奥深いって思った。」


ずっと、両手で包み込んだ缶を見たまま
そこまで話すと、
ゆっくり私の方を向く。

寒さで潤んだ目が、私を捉える。