「美那穂ちゃん。」

「え、な、なに?」


「僕お腹空いたんだけど、
何かお菓子とか持ってない?
ほら、カバンは教室に置いてきちゃって。」


……渡すなら今がチャンスではある。

でも、それで手作りを渡して
引かれたりしたら、
きっとしばらくは立ち直ることが
できないから。

私は、カバンのファスナーを開けると
市販のチョコレートを手にとって、
彼に手渡した。


「これって…」

「バレンタインチョコ。
渡すの遅くなってごめんね。
それと、言い出すきっかけを作ってくれて
ありがとう。」

「……用意してくれてたんだね。
ありがとう。
でもそっかぁ、手作りじゃ、ないんだ。」