「なんで……追いかけてくれたの?」

「うん、俺の大切な人が
何か悩んでそうだったから。

で、バレンタインのチョコでも
渡すの困ってるの?」

「……そうだね、そんなところ。」


彼はあははっと笑った後、
そっと私の頭を撫でた。


「よしよし。大丈夫だよ。
俺も応援してる。」


ほら、また妹のような扱い。
触れられて嬉しい反面、チクリと心が痛む。


「応援してるっていわれても……」


渡す相手、今隣にいるんだよなぁ……
と口には出せず、ぐっと飲み込む。

お互いに黙ったまま、時間が過ぎていく。

私が話しかけようとした時、
5時限目が始まる予鈴が鳴り響く。

少しの決心が呆気なく崩され、
また口を噤んだ。