(懐かしい……。笑い方も何もかも、あの頃のまま)


 フルフルと首を横に振りながら、清香は小さく俯いた。


「いえ……知り合いに似ていらっしゃったので……ご無礼を」


 ついつい敬語が口をつく。無理もない。彼はずっと……千年もの間、清香が芹香同様に尊敬し、求めて止まない存在だったのだ。
 あまりの驚きと喜びに、うまく息を吸うこともできない。清香は眉間に皺を寄せ、浅い息を繰り返した。


「お姉ちゃん?」


 芹香が怪訝な表情を浮かべている。


「ごめん……大丈夫だから」


 そう口にするものの、清香の動悸はおさまる気配がない。清香は胸を押さえながらギュっと目を瞑った。


(あぁ……こんなことではいけないのに!今度こそ……今度こそ私が……芹香を幸せにしないといけないのに!)

「そこで少し休みましょう。時間、まだ大丈夫ですよね?」


 東條が少し離れた所にあるベンチを指差すと、芹香はコクリと頷いた。思わぬやり取りに、清香は必死に顔を上げる。けれどその時、チラリと目に入った芹香の頬は、鮮やかな桜色に染まっていた。