(やっぱり……間違いないようね)


 どうやら紫には清香と同じ、前世の記憶があるらしい。わざわざそうと分かるように話してくるあたり、紫は清香へ喧嘩を仕掛けたいのだろうか。


(ここで挑発に乗るのは簡単だけど)


 とはいえ清香は、相手の土俵に降りてやるつもりはさらさらなかった。
 芹香と東條の仲は守らねばならないものの、清香自身はできうる限りこの女と関わり合いたくない。その想いが強いのである。


「さぁ暁、奏君に挨拶しに行きましょう」

(何ですって!)


 紫がそう言って、底意地の悪そうな笑みを浮かべながら、東條たちの方を向いた。


(こいつ、芹香たちの邪魔をする気!?)


 清香の瞳が怒りでつり上がる。
 相手がそのつもりならば、関わり合いになりたくない等と言っている暇はない。清香は思わず身を乗り出す。けれどその瞬間、清香の目の前に何かが立ちはだかった。