「あの、遠目からしか見れてませんけど、芹香さんって、すっごく綺麗ですよね！同い年なのに、すごく大人びているし、それに……」

「暁、その辺にしときなさい」


　紫は不機嫌を隠すこともなく、忌々し気にそう言い放った。まるで汚いものでも見るかの如く清香を睨み、口元を手で覆い隠している。あまりの扱いのひどさに、清香は思わず表情を歪めた。


「この女も、この女の妹も、大したことないわよ」

「お姉ちゃん！またそんなこと言って」


　暁が紫に向かって声を荒げた。清香にとって意外なことだった。


（大人しい娘さんだと思っていたけど、案外意思の強い子なんだろうか）


　清香の中で、暁の印象が少し変わった。


「失礼でしょ、そんなこと言ったら。大体、良く知りもしないくせにどうしてそんな……」

「知ってるわ」


　紫はそう言って清香を真っすぐに睨んだ。再び大きな憎悪の感情が清香の中に流れ込む。ゾワゾワと背筋が震え上がる。清香は自身を抱き締めながら、ゆっくりと紫を睨み返した。互いに口の端が吊り上がっている。


「この女のこと。ずっと……ずっと前からね」


　その瞬間、清香の疑念は確信へと変わった。