『清右近だか何だか知らないけど、調子乗ったおばさんよね。偉そうな顔してあれこれ書いてるけど超下手くそだし。私は趣の分かる人間、他の人より優れてる、みたいな感じで言ってるけど、何でもない時だってそういう風に振る舞ってるわけで、ホント!そんな人間が先々苦労しないわけないわ』
これは、とある女が日記に書き記した内容だ。日記に書かれた清右近、というのが前世の清香に当たる。
日記を書いた女の名前は藤式部……おそらく今、清香の目の前にいる人物だ。
前世の東條には、清香が仕えていた前世の芹香のほかに、もう一人中宮がいた。いや、正確には中宮としてもう一人、後から無理やり捩じ込まれた女、暁子がいた。彼女の女房をしていたのがこの女、藤式部である。
暁子は十歳になるかならないかという若さで、政治の道具として父親から宮中に送り込まれた。当然、そんな幼子に中宮としての知性も品性も備わっているはずがない。それを補うため、藤式部は宛がわれた。教育係としての藤式部は大層優秀で、とても教養ある女性だったと人は言う。
これは、とある女が日記に書き記した内容だ。日記に書かれた清右近、というのが前世の清香に当たる。
日記を書いた女の名前は藤式部……おそらく今、清香の目の前にいる人物だ。
前世の東條には、清香が仕えていた前世の芹香のほかに、もう一人中宮がいた。いや、正確には中宮としてもう一人、後から無理やり捩じ込まれた女、暁子がいた。彼女の女房をしていたのがこの女、藤式部である。
暁子は十歳になるかならないかという若さで、政治の道具として父親から宮中に送り込まれた。当然、そんな幼子に中宮としての知性も品性も備わっているはずがない。それを補うため、藤式部は宛がわれた。教育係としての藤式部は大層優秀で、とても教養ある女性だったと人は言う。