「崇臣さん……?」


 少し幼さの残る、可愛らしい声が崇臣を呼んだ。清香と崇臣は同時に、声の主の方へ振り向いた。

 そこには丸顔に黒々とした豊かな髪の毛、あどけない表情が印象的な少女が一人。それから少女に付き従うかのように佇んでいる、少女と呼ぶには貫禄のある女がいて、二人のことをじっと見ている。

 その瞬間、何故だかわからないが、清香の背筋をとてつもない悪寒が走った。


(なに……!?何なの、この感覚!怖っ……)


 ぶるぶると震える身体を抱きながら、清香は眉間に皺を寄せた。
 そんな清香を尻目に、崇臣は憮然とした表情のまま、二人組の女性にペコリと頭を下げた。


「藤野さま……お久しぶりです」


 清香に聞かせるためだろうか。崇臣はハッキリとそう言った。思わぬ展開に清香は目を見開く。


(藤野!これが……!)


 前に崇臣が言及していた人間らしい。つまりこれで、清香と崇臣、どちらも賭けになったことになるわけだ。

 清香はそっと顔を上げて、目の前の二人組を観察した。
 丸顔の幼い少女は、悪くいえば全てが平均的で特徴がない。あまり意思の強くないタイプに見える。

 対するもう一人は、陰気な表情をしている割に、妙に気が強そうであり、プライドも高い様子だ。全身からにじみ出る負のオーラが恐ろしい。まるで祟り神かのような禍々しさを放っていた。