「あなたも来てたの……」


 思わずそう漏らすと、崇臣はふんと鼻を鳴らした。

 正直、崇臣が来ることは清香の予想の範疇だった。けれど、実際に現場を目撃すると、粘着質だなぁとか、ここまで来ると変態臭いとか、そういった感想しか出てこないのだ。

 因みに清香は、自分が芹香に対して、変態・マニアの域に達している自覚があるし、そんな自分を誇っている。


「当然だ。主の成長を見届けるのが俺の使命」


 至極真面目な表情で、崇臣はそう言い放った。


(うん、こいつも多分変態って言われて喜ぶタイプの人間だ)


 妙なシンパシーを感じながら、清香は小さくため息を吐いた。


「わかる。その気持ちは分かるんだけど!でもね……私、あなたのその格好で隠れて回るって、無理があると思うの」


 そう言って清香は崇臣を見上げた。
 崇臣はこの間と同じ狩衣姿だ。人混みに紛れようにも無理がある服装である。清香が付け回される側なら、一瞬で崇臣に気づくだろう。


「こういう時ぐらい、その場に溶け込む努力をしなさいよ。あなたの融通の利かない所、絶対に損しかしないんだから」


 清香はそう言って眼鏡をくいっと動かした。