「今は楽よねーー。ボタン一つで簡単にメッセージが送れちゃうんだから」


 平安の時代。手紙は従者たちが主から預かり、届けに走っていた。
 それらは文箱に入れられることもあったが、どの時代にも流行というものはあり。清香たちの生きた時代は、手紙を花の枝に結び付けて贈ることが流行っていたのだ。


「んーー?そうでもないと思うよ?」


 ベッドに寝っ転がり、真剣な眼差しでスマートフォンを見つめながら芹香が言う。東條に送るメールの内容を考えているのだ。


「お姉ちゃんはSNSをやってるからわかると思うんだけど。デジタルの無機質な文字だけじゃ、相手の感情とか見えてきづらいでしょう?だから語尾とか絵文字とかすごい気を遣うし」

「まぁ、それはそうかもしれないけど」


 懐古厨になるつもりはないものの、季節の花を共有したり、自分の香りを相手に届ける。そんなアナログならではの楽しみ方があったように清香は思うのだ。