「おまえ、分かっているじゃないか」

「それはどうも」


 答えながら、清香は実年齢に似合わぬ、大人びた笑みを浮かべた。褒められて嫌な気はしないし、事は前世に関わることだ。ついつい挑戦的な気分になった。


「それで、おまえは主とどういった関係なんだ?」


 ふと思い付いたように、男が切り出した。本来ならば迎えに呼ばれた時点で確認しておくべきことだろう。けれど、この男は基本的に“東條の命には絶対服従”の融通の効かぬ人間だ。呼ばれた先に誰がいようと興味もなければ、正直どうでもよかったのだろう。


「おまえじゃないわ。清香よ」


 唇を尖らせながら、清香が言った。何故だろう。どことなく棘のある口調になってしまった。


「じゃあ清香。おまえと主はどういった関係だ?」

(いきなり呼び捨てかよ……)


 男は無表情のまま清香を見下ろす。
 清香は眉間に皺を寄せながら、小さくため息を吐いた。