ふと見れば、崇臣は周囲の視線を一身に集めている。男性客の連れらしき女性たちの熱い視線だ。


(いや、自分の男を見ろよ)


 清香は唇を尖らせながら、ツカツカと崇臣に近づいて行く。崇臣は相変わらず憮然とした表情で清香を見つめていた。


「似合うだろう」

「えぇ、腹立たしいほどに」

「ハハ、素直だな」


 崇臣はそう言って清香の頭をクシャクシャと撫でる。普段の能面のような表情が崩れ、屈託のない笑顔が覗き、清香の心をかき乱した。


(あぁもう! 乱すなよ、莫迦)


 心の中で悪態を吐きつつ、清香が自身の髪を撫でつける。せっかく時間をかけてセットしてきたのに台無しだ。
 なおも穏やかに微笑む崇臣を見上げながら、清香は心の中でそっと、ため息を吐いた。