崇臣の服を選ぶのは中々に楽しかった。普段入らないメンズ用ショップというのは新鮮で。清香はあれやこれやとアイテムを手にとっては、崇臣に当てて見せた。


「おまえ、ノリノリじゃないか」

「だって、ここまで来てしまったら折角だもの。楽しまなきゃ損じゃない?」


 清香はそう言って笑うと、中身の詰まったカゴを崇臣に押し付けた。


「これ、全部試着してよね!」

「……今日俺は、シャツを見に来たんだよな?」


 崇臣が呆れたような表情を浮かべながら、カゴの中身を指さす。そこにはシャツだけでなく、ジーンズや帽子が複数詰め込まれていた。


「そうだけど! 着てみてほしいの!」


 清香が懇願すると、崇臣は困ったように笑いながら、渋々試着室へと消えて行った。


(良し!)


 清香は鼻息も荒く微笑むと、他の商品を物色するため、クルリと振り向いた。


(……ん?)


 その瞬間、マネキンの向こう側でいくつかの影が素早く動く。清香たちから姿を隠すような、そんな動きだ。