それから数日後のこと。


(まさか本当に付き合わされるとは)


 清香はむすっと唇を尖らせながら、前後に身体を揺らした。

 先日崇臣は、清香たちの幼いころのアルバムを堪能した後、半ば強引に、清香と出掛ける約束をした。
 それはあまりにも脈略なく、唐突で。崇臣らしいと言えば、その通りなのだが、芹香と東條、それから美玖は、何とも形容しがたい驚いた表情を浮かべていた。


(そりゃあそうよね。私自身びっくりしたし)


 恐らくあの時、あの場所でなかったら、清香はうまいこと理由を付けて、出掛けるなんて話は反故にしていたかもしれない。次第に冷静さを取り戻し、崇臣と距離を取ろうとした可能性だってある。奴はきっと、それを見越していたのだろう。


(しっかし、男物のシャツなんて選ぶの、初めてだなぁ)


 街中では車は邪魔だということで、今回の待ち合わせ場所は駅になった。家では何度も会っているというのに、待ち合わせというものは妙にソワソワとするもので。清香は忙しなくスマホをチェックしながら、心臓を高鳴らせていた。


(芹香もこんな気持ちだったのかなぁ)


 芹香と東條の初めてのデートの日。崇臣と一緒に物陰に隠れ、後を付け回したことが、もう昔のことのようだ。