「美玖、こいつは崇臣。東條さんのところで働いてるの」


 清香の言葉に美玖がコクコクと頷く。芹香が不安げにゴクンと唾を呑んだ。


「で、崇臣。こっちは私の従妹で」

「興味ない」


 崇臣は清香の言葉を遮ると、憮然とした表情のままアルバムを捲った。


「興味ないってあんた……」


 思わずそう漏らしながら清香が眉間に皺を寄せる。
 けれど当の美玖は、明らかに無礼な反応にも関わらず、未だ瞳を輝かせて崇臣を見つめていた。唇が何度も『崇臣さん』と音もなく動いている。
 芹香と東條は思わぬことに未だ戸惑いを隠せていなかった。そして清香はというと。


(莫迦じゃないの……私)


 今は前世のように、東條が美玖に惹かれなかったことを喜ぶべきだ。そう思っている。
 けれど、それよりも何よりも、崇臣が美玖に興味を示さなかったことが、清香の心を支配していた。


(私、最低だ)


 美玖が傷ついているかもしれない。ならば一緒に傷ついたり、怒ったりするべきなのだろう。けれど――――。
 意思とは無関係に清香の頬が染まっていく。緩む唇が、ドキドキと高鳴る心臓が憎らしかった。