(なっ……何!?)


 部屋に入った瞬間、清香には分かった。何か、これまでとは違う空気が流れていた。芹香がドギマギしながら、気づかわし気に清香を見上げている。


「崇臣さん、っていうの?」


 声の主は美玖だ。瞳をキラキラと輝かせ、ほんのりと頬を染めながら、じっと崇臣を見上げている。美玖の周りから、ふわふわと明るい、桃色のオーラが漂っていた。


(こ、これは……)


 どうやら一目見て、美玖は崇臣のとりこになってしまったらしい。まだ中学生で恋愛経験の浅いせいだろうか。この場にいる誰の目にも、美玖の崇臣への好意は明らかだった。
 東條も表面上は穏やかな顔をしているが、時折芹香と顔を見合わせて、驚きを共有している。


「えっ……えぇっと」


 崇臣はチラリと眉を上げたっきり、特に感想はないようで。どっかりと清香の側に腰掛けると、黙ってアルバムを捲り始めた。
 美玖は期待に満ちた眼差しで、チラチラと清香を見つめている。どうやら紹介してほしいらしい。控えめな美玖らしくない、実に珍しい反応だな、と清香は思った。


(何か、このままにしとくのも気持ち悪いし)


 事情はどうあれ、こういう場で紹介が全くないのは不自然だ。清香は心の中で、小さなため息を吐いた。