「ねぇお姉ちゃん、崇臣さんにも家に上がって貰おうよ。今ちょうどね、私たちの子どもの頃のアルバムを見てたところだったの」


 芹香はそう言って、崇臣へと笑いかけた。


「へ?」


 清香に提案しているようで、実際それは崇臣に向けたセリフだ。芹香の瞳は期待に満ち溢れていた。


「それは見逃せないな」


 崇臣はキラリと瞳を輝かせると、芹香の後に続いた。元々の顔の造りのせいで、傍から見れば無表情に見えるものの、実際は中々に興奮しているようだ。少なくとも清香にはそんな風に見えた。


(って! 私を置いていくなし!)


 清香は急いで靴を脱ぐと、バタバタと二人の後を追った。先ほどまでの緊張感はすっかり身体から抜け、心も体も随分軽やかだった。けれど、子どもの頃の写真を崇臣に見せるのはいくらか抵抗がある。


(弱味とか握られたら嫌だし)


 清香の思いつく限り、そんな物はないように思うが、今この男には何がどう作用するか分からない。何事にも慎重にあらねばならない、というのが清香の考えだった。


「ちょっと崇臣! 私は上がっていいなんて一言も……」


 そこまで口にしてから清香は止まった。
 目の前には芹香と崇臣、それからリビングに残っていた東條と美玖の四人がいる。