(何よ、その表情……なんかムカつくっ)


 ドキドキとうるさい心臓を持て余しながら、清香はキリリと表情を引き締めた。


(とにかく! まずは、美玖のことを何とかしないと)


 泣くだけ泣いた。弱音も吐いた。だから次は、求める未来に向けて動かねばならない。
 清香は空いた方の手で、自身の頬をぺちぺちと叩いた。


(その後は……)


 怪訝な表情を浮かべながら、崇臣が清香を見つめている。


(その後は、こいつとのこと、ちゃんと考えてみようかな)


 考えながら、清香の頬が紅く染まっていく。

 周りではミンミンゼミがけたたましく鳴いていた。セミたちは、自身の命の灯があと数日だと知っているのだろうか。その答えは分からないものの、彼らは清香たちがここからいなくなった後も、番を求めて泣き叫び続けるのだろう。
 そっと崇臣を見つめ返しながら、清香ははにかむ様に笑うのだった。