「因みに、買い物には本当に付き合ってもらうからな?」

「うっそ!?」


 崇臣の一言が、清香を思考の渦から呼び戻す。普段融通が利かない割に、こういうことに対しては実に頭の回る男なのである。ニヤリと笑う崇臣に、清香は唇を尖らせた。


(ちぇっ! あんなこと、言うんじゃなかった)


 心の中で清香がそっと悪態を吐く。すると、ただでさえ汗ばんでいる右手が、さらに熱を持った。大きくて節ばった、崇臣の手のひらが清香を包んでいた。


(~~~~~~~~また繋ぐし)


 けれど清香はもう、崇臣の手を振り払うことができなかった。


「……まぁ、行くけど」


 極々小さな声で、清香が漏らす。
 すると普段無表情な崇臣が、何やら嬉しそうな笑顔を浮かべた。