それから程なくして、清香は落ち着きを取り戻した。ぼんやりと桜の散る様を見ながら、もう数十分もの間、暇をもて余している。


(だって、待ってろって言われたし)


 本当はすぐにでも二人の後を追いたかったが、約束は約束だ。清香は東條の言う“家のもの”が来るまで、この場を動けずにいた。


(さっきの写真に付ける文章でも考えるかな)


 そんなことを考えながら、清香はスマートフォンを取り出した。ディスプレイには撮り立てホヤホヤの、芹香の美しい写真がすぐに表示される。


(本当に、なんて可愛いのっ!)


 ウットリと頬を染めながら、清香が笑う。誰かに見られれば、何か至らぬ薬でも接種していると勘違いされそうな、そんな表情だ。


(さて、と)


 気を取りし、清香はスマートフォンを握りしめる。それから清香の指は光のような速さで、一気に文字を刻んだ。芹香の姿を見ているだけで、自然と文章がスラスラと浮かび上がるのだ。胸に湧き上がった想いすべて文字に昇華し終えると、清香はふぅ、と満足気に息を吐いた。


(現代は良いわ……私が素敵!って思ったこと、文字だけじゃなくて視覚的にも他の人と共有出来るんだもの。おまけにリアルタイムときた)


 ふふん、と笑いながら、清香が投稿ボタンを押そうとした。
 その時だった。