「その頃の親父はすごく忙しくてほとんど家にいなかった。それでも、まとまった休みができるとここに連れてきてくれたんだ。花見も、川遊びも、紅葉狩りも、雪遊びも、いつもここだった」
きっとそれは、創介さんにとって大切で懐かしい記憶なのだろう。
窓の外のその先を見ながら話す顔が、とても幸せそう。
「望愛は子供の頃家族で出かけたりしたのか?」
「いいえ。私は家族で遊びに行った記憶がないんです。美愛がいましたし、両親も忙しかったので。楽しい思い出と言えば一条家のガーデンパーティーくらいでしょうか」
当時は家族でいられるだけで嬉しかったけれど、今にして思えば寂しい子供時代だったのだと思う。
「俺たちは似た者同士だな」
「えー」
なぜか、笑ってしまった。
幸せとは言えない子供時代を過ごしたって意味では、確かに私たちは似ている。
でも、私よりも美愛の方が辛かっただろうし、創介さんよりも桃ちゃんの方が寂しかったはず。そう思えば、誰に文句を言うこともできない。
「なあ、望愛」
「はい」
色々と思い出に浸っていた私を呼ぶ創介さんの声に、顔を上げた。
「親父は33歳で亡くなったんだ。だから俺は親父の亡くなった年を超えるまで家庭を持たないと決めていた。と言うよりも、不安だったんだ。ある日突然いなくなるかもしれないと思うと、怖かった」
珍しいな、いつも強気な創介さんが弱音を吐いている。
私は不思議な思いで耳を傾けた。
「俺も人並みに恋愛だってしてきたが、誰かを愛しすぎないようにいつもどこかでストッパーをかける自分がいた。今まではずっとそうやって生きてきたんだ。でも、望愛にだけは歯止めが効かない。望愛だけは誰にも渡したくはない」
「創介さん」
今日の創介さんはいつもと違う。
きっとそれは、創介さんにとって大切で懐かしい記憶なのだろう。
窓の外のその先を見ながら話す顔が、とても幸せそう。
「望愛は子供の頃家族で出かけたりしたのか?」
「いいえ。私は家族で遊びに行った記憶がないんです。美愛がいましたし、両親も忙しかったので。楽しい思い出と言えば一条家のガーデンパーティーくらいでしょうか」
当時は家族でいられるだけで嬉しかったけれど、今にして思えば寂しい子供時代だったのだと思う。
「俺たちは似た者同士だな」
「えー」
なぜか、笑ってしまった。
幸せとは言えない子供時代を過ごしたって意味では、確かに私たちは似ている。
でも、私よりも美愛の方が辛かっただろうし、創介さんよりも桃ちゃんの方が寂しかったはず。そう思えば、誰に文句を言うこともできない。
「なあ、望愛」
「はい」
色々と思い出に浸っていた私を呼ぶ創介さんの声に、顔を上げた。
「親父は33歳で亡くなったんだ。だから俺は親父の亡くなった年を超えるまで家庭を持たないと決めていた。と言うよりも、不安だったんだ。ある日突然いなくなるかもしれないと思うと、怖かった」
珍しいな、いつも強気な創介さんが弱音を吐いている。
私は不思議な思いで耳を傾けた。
「俺も人並みに恋愛だってしてきたが、誰かを愛しすぎないようにいつもどこかでストッパーをかける自分がいた。今まではずっとそうやって生きてきたんだ。でも、望愛にだけは歯止めが効かない。望愛だけは誰にも渡したくはない」
「創介さん」
今日の創介さんはいつもと違う。